盗撮中毒者の末路

盗撮から抜け出せずに破滅へと進んでいった愚か者の経験談です。

欠如

盗撮に成功して以来、僕は朝から晩まで家を留守にすることが多くなった。

目的はもちろん盗撮の為である。

不思議なもので、盗撮にバレそうになったことなど頭の片隅から消え失せ、今では成功ことしか頭になかった。

「バレるわけがない」「次も必ず成功する」

 

本屋、レンタルビデオ店、雑貨店、洋服店、ゲームセンター…

 

とにかく一日中歩き回って盗撮が出来そうな場所や女性を探した。

たかが、一度成功しただけでこれだ。

引き籠りから一変、犯罪行為の為に社会へと飛び出した。

動機はともかく、この頃は外に出るのが楽しかったのだ。

都内の人の集まる場所や、死角になるような場所を探し、可愛い子を見つければ後を付けて盗撮を行った。

スリルが快感へと変換されると、日々のメリハリが生まれ、充足感で僕は満たされた。

 

春はまだ訪れず、厚着をする女性がほとんどだったが下半身はスカートで、黒ストッキングや黒タイツを履いた脚は自らのラインを強調させて僕を誘った。

上半身はモコモコでも、股下にカメラを差し込めば、そこは一枚のパンツだけだった。

 

レンタルビデオ店でCDを試聴している後ろから撮影をしたり、周りに人がいる中、立ち読みしている女性のスカートの中にカメラをねじ込んだりと、盗撮行為はエスカレーターしていった。

 

そんな中、肝を冷やす出来ことが一つ起こる。

エスカレーターに乗ったOLを盗撮した時、ヒップだけでなくフロント部分も撮りたいと欲に駆られ、意気込んでカメラを差し込んだが女性の太ももにカメラが接触してしまったのだ。

さすがに女性もそれに気付くと、後ろを振り返って僕を見た。

空いているエスカレーターで不自然なまでに近寄ってカメラを握りしめている男。

太ももが感じた堅い感触。

盗撮がバレたことは明確だった。

僕をジッと睨みつける女性。

音も時間も止まったような感覚だった。

ひとり用エスカレーターで走り去る事も出来ず、僕の心臓は女性によって握りしめられていた。

生きるも死ぬも彼女次第。

長い沈黙の末、エスカレーターが登り切ると女性は何も言わずに歩き去っていった。



帰宅した僕は、恐怖よりも赤い扇情的なパンツを履いていた女性に対して興奮を覚えてオナニーをした。

女性からの睨みすら快感と感じてしまった。

あの時の女性が抱いた不快感と恐怖についてこの時の僕は微塵も気にしていなかったのだ。